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産経新聞 平成21年3月13日掲載【健康らいふ】メタボリックシンドローム 鼎談「特定健診・保健指導元年を振り返って」

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■予防政策への転換を評価

■病気のリスクを早く見つけて改善

「特定健診・特定保健指導元年を振り返って」をテーマに、2月中旬、東京・大手町の産経新聞東京本社で、厚生労働省生活習慣病対策室長の関英一氏▽保健事業に取り組んでいる東大病院助教でHCCヘルスケア・コミッティー(株)代表の古井祐司氏▽健保組合と連携して事業に取り組む、みずほフィナンシャルグループ人事部長の倉中伸氏が鼎談を行なった。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の概念を取り入れ、これまでの健診主体の健康政策から予防、さらに事後指導の取り組みへと大きく転換したことを評価し、集積し始めたデータの生かし方、今後の改善点などを話し合った。 (大串英明)

鼎談の出席者写真 厚生労働省生活病対策室長・関英一氏(中) みずほフィナンシャルグループ人事部長・倉中伸氏(左) ヘルスケア・コミッ ティー代表・古井祐司氏(右)

鼎談の出席者
厚生労働省生活病対策室長・関英一氏(中)
みずほフィナンシャルグループ人事部長・倉中伸氏(左)
ヘルスケア・コミッティー代表・古井祐司氏(右)

―――――今回の制度の狙いと位置づけは

関氏 従来、市町村での老人保健法の基本健康検査やがん検診などがありましたが、これからは予防の時代だ、ということを国民の多くに理解していただくために予防事業の大きな柱として特定健診・特定保健指導が始まりました。生活習慣病の多くが増加基調にある中、国民皆保険を維持しつつ医療費をどう支えていくか。今回は病気を早く見つけて治すというその前に、病気のリスクを早く見つけて改善するための支援を行なうという新しい考え方なのです。メタボという言葉も急速に普及し、国の施策の後押しになりました。国民自ら自分の健康を見直すいい機会になればと思います。

古井氏 がんと違って生活習慣病は痛くもかゆくもないのでなかなか予防の行動には至らなかった。それがメタボの概念の導入で、太り過ぎを改善すれば効果が出ることが分かりやすく周知され、普及したと思います。内臓脂肪が蓄積すると日々の生活の中で傷ついた血管を修復してくれる善玉の「アディポネクチン」という物質の分泌が減り、動脈硬化を加速することが最近の医学研究で明らかになりました。ここを予防の入り口としたことは理にかなったことです。

―――――現在の進捗状況は

古井氏 私どもは健保組合などの医療保険者から保健事業を受託し、保健指導などのサービスを提供しています。健保などの動きを見ていますと、これまでは健診データがきちんと戻ってきていないところも多く、保健指導などの本格的な取り組みはこの春ぐらいからと思われます。しかし、社内外の準備の進んだ健診機関を積極的に活用するなどして進んでいる健保も見受けます。

倉中氏 健保は医療費の給付がメーンの仕事ですので、こういう事業を立案、実行することには慣れておらず、戸惑うことも多かったと思います。しかしわれわれの場合、以前から健保が事業主から業務を受託して労働安全衛生法上の定期健診を実質的に担っていましたから入りやすかったという面がありました。今回の予防に視点を置いた特定健診・保健指導の新しい考え方や実際のシステム構築などは、事業主側と議論を重ねて練り上げ、年末から年始にかけてようやく「階層化」を済ませ、実施にこぎつけるなど初年度としては何とかスタートできたかなと感じています。対象者をうまく誘導するには、事業主との連携、組織の協力が不可欠。例えば、われわれは、対象者への通知とあわせて職場の上司などに当制度の実施についてアナウンスし協力を求めておき、保健指導の対象となったとなった社員が上司にその旨報告することで、日中指定された時間に保健指導を受けやすい環境を作りました。おかげで今回の保健指導の参加率は8割程度になる見込みです。

古井氏 企業の場合は、健保・事業主・産業医三者のコミュニケーションがとても大事です。お互い協力的な姿勢を企業内で醸成していくことが必要ですね。

―――――これからの課題として

関氏 制度の立ち上げに伴い、もっと早くその内容を周知徹底させる必要があっただろうし、企業健保などがアウトソーシングする際の契約関係、あるいは保険事業に関して電子フォーマットでのデータの情報共有化など、非常に重要だが煩雑で込み入った案件について本来、国の手助けであらかじめ先に進めておかなければいけないことが出遅れていたことは否めません。そういう問題を地道にクリアしつつ、事業本来の利点であるきめ細かな対応へと先駆的な健保や研究者が道をひらいている。敬意と感謝に堪えません。

古井氏 初年度は、健診を普及させる準備が大変だったと思います。これまで健診をあまり受けていなかった自営・無職の方やサラリーマンの家族まで、特定健診の対象になったのです。例えば国保の目標で、5年後の受診率を70%まで引き上げるには、体制整備やPRが必要です。また、特定健診以前は、検査項目やデータフォーマットもバラバラで、事後指導に使いにくい状態でしたが、今ようやく改善されて電子的な標準フォーマットができつつあります。

―――――今回の保健指導については

古井氏 電子化された健診データが蓄積されると、例えば最近3年間で急に血糖値が上がってきた人に注意を促し、今なら糖尿病になるのを予防できますと伝えることができます。また、加齢に伴い血圧は上がる傾向にありますが、集団全体のデータを分析すると、同じ性・年齢の中であなたは特に値が高くなっていますが、最近何か生活環境が変わりましたか、などと心に響く指導ができます。ある事業所では、社員の多くで血糖値が高いことが分かった。そこですべてのフロアに整備されている自販機での飲料を健康飲料に転換が図られたという話も。一方、ハイリスク者への保健指導は「特定保健指導」といって今まで通り面接などを行いますが、今回は皆の健診データを整備するため、健診を受けた方全員に「情報提供」という保健指導をする制度です。夜中に食事をしないで残業前にお弁当を食べてみては、といったメッセージを医療保険者から個々にお送りします。

―――――先進国でも、病気になる前から全員に保健指導する国はないですね

古井氏 健診というのは、わが国独特の仕組みで、病気の予兆の段階から保健指導できるのは画期的なこと。

関氏 生みの苦しみとでもいうのでしょうか。情報の基盤が築ければ、個人を特定できない形にした大量のデータを集積して分析でき、世界に向けて有用なエビデンス(科学的証拠)を発信できるようにもなります。

―――――特定健診・保健指導を成功させる秘訣は

倉中氏 今回、私どもは数値が高い人に対象者を限定したので、関心度も高く、8割程度の出席率になりました。しかし今後数値が低い人に対象範囲を広げていったらどうなるかという問題があります。また、家族など被扶養者への対応という課題もあります。今後、地元の地方公共団体の健診は断られる可能性もありますので、5年計画で体制づくりを進め、徐々に実施率を上げていくつもりです。

古井氏 成功の鍵は、5年間で参加を促進し、皆の健康意識を上げることです。がんの治療と違い予防は優先度が低くなりがちですので、保険者だけでなく事業主、自治体、医療機関が背中を押してあげる必要があるでしょう。「情報提供」をしてから「特定保健指導」の通知をすると参加率も上がります。

関氏 情報提供・動機付けなどの階層化で一定のルールを作ったことも、その人の特性を見極める意味で非常に役に立っていると思います。服薬をしている人は特定保健指導の対象ではないが、こうした人たちにまで指導を行う保険者はさらに成果をあげています。

―――――今後の予防のあり方として

古井氏 ドイツでは、2003年から生活習慣病の重症化防止のために、日本の特定健診制度と似た仕組みを取り入れました。5年目を迎え、糖尿病による失明、下肢の切断の減少といった効果が見えてきたそうです。ただ、すでに病気の人だけが対象であり、国民全体に健診・保健指導をやる日本の制度はすごいと、感心していました。今後は、ドイツのようにすでに糖尿病だが、それ以上重くしないための予防や、肥満ではないが血圧は高いといった方への予防に取り組むことも重要でしょう。

倉中氏 今回の制度では、疾病予防の成果がでれば、将来、負担金の軽減措置があるというインセンティブがあります。しかし成果が出るまで相当なタイムラグがあるので、健保財政という面から見ると、なかなか動機付けにはなりにくいという弱点があります。しかし今や企業側が健保とともに従業員らの疾病予防に真剣に取り組むことは、将来、企業にとっても大きなメリットがあるという認識を持つ必要がある時代だと思います。

―――――それぞれの立場から期待するものとして

古井氏 この制度が普及すれば、中長期には、病気の重症化が減り、心筋梗塞や人工透析などにかかる医療費は結果的に減らせると思います。ドイツの例でも、患者さんの健康意識が高まることで治療の中断が減ったり、保健指導に積極的に参加するようになり、医師・患者・保険者それぞれメリットが付いて、どんどんドライブがかかっている状況だそうです。保健指導で健康体を取り戻し、企業は生産性が上がり、家族は要介護も減って、社会全体が元気になるとよいですね。

倉中氏 確かに健診までは行く人も多いが、保健指導までちゃんと受けてもらえるかどうか心配な点はあります。事実、社員の家族や国保の対象者にはまだ十分に認知されていません。まずは国や企業が、特定健診・保健指導についての正しい情報提供や成果を地道に提供し続けることで、認知度を向上させていく努力が必要なのではないでしょうか。

関氏 健診は受けていても、その結果を一人ひとりに保健指導できちんと返していき、そのデータを同じフォーマットで蓄積することの意義は絶大です。第一に国民には、これは自分にとってどんどん活用すべきサービスなのだと認識してもらう。第二にサービスを提供する側もデータを踏まえ、対象者をその気にさせていくスキルや説得力をアップさせていってほしい。国としてもこれから得られるであろう貴重なデータを分析して地域や健保に活用法を伝えていくとともに、この予防事業そのものが皆のものであり、国民の一人ひとりが当事者として存分に活用できるよう努力を続けていかなければならないと思っているのです。

(以上、産経新聞社より許可を得て転載)

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